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特集 植木等のレコードへ行く
東芝EMIはついに御殿場の工場も手放し,技術部門を中心に大リストラを行って大幅に業務縮小したようです。少なくとも工業製品としては日本最高品質(つまり世界最高品質)のレコード製造を誇った東芝レコードも,ひとつの時代を終えてしまったのかもしれません。(06/12/14追記 今日のニュースによると東芝は保有している東芝EMIの全株式をEMIグループに売却することを決めたそうです。ついに東芝の名前は音楽産業から完全に消えることになりそうです。「EMIジャパン」とかになるのか,それとも会社自体なくなるのか。)(14/04/14追記 ついに世界中からEMIレコードは消滅し,ユニバーサルとワーナーに分割されて買収されてしまいました。まさかEMIまでなくなるとは思いませんでした。)
私が初めて買ってもらったレコードは東芝レコードでしたし,その後もビートルズとアップルレコード,カザルスやフルトヴェングラーと,私の音楽人生は東芝レコードとともにありました。東芝レコードの音質(特にビートルズとエンジェルレーベル)についてはいろいろ思うところもありますが,それは自分の親の欠点についていろいろ思うところがあるようなものだと思います。もし東芝レコードがなかったら私の人生はまったく違ったものになっていたでしょう。
このページでは往年のメジャーレーベルの面影を偲んでいろいろな懐かしい東芝レコードを紹介していきます。
なお,すべての写真はクリックするともっと大きな画像を見ることができます。
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レーベル(サンプル盤)![]() |
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私は高校生時代大場久美子の大ファンでブロマイドや切り抜きをたくさん集めましたが,歌だけは「あまりにヘタで聴いてると脳が溶けそうになる」ので当時は敬遠していました。ところがいま聴くと,当時の制作スタッフが録音上のギミックを控えて大場久美子の歌のヘタさをむしろ魅力として活かそうとしていることがよくわかります。とくに名曲「エトセトラ」ではそれが成功していて,誰もが経験するが必ず過ぎ去ってしまうもののはかなさを明るく美しく伝えています。しかし「スプリングサンバ」はなぜこうならねばならなかったのか........。
ついでにアルバムも何枚か買いましたが(ヤフオクで1枚300-500円),そちらではいろんな曲を歌っているだけに歌のヘタさがある種の限界を超えていて麻薬的です。でもいまの耳で聴くとそれもやはりプロデュースされたヘタさに聞こえます。アルバムにはいま見てもすごくかわいい「クーミン」の写真がいっぱいなのも楽しめます(06/10/27)。
岡崎友紀といえば「なんたって18歳」や「奥様は18歳」(石立鉄男ですね.....)ですが「私は忘れない」をはじめとしたヒット曲もたくさんある人です。大好きな「私は忘れない」のシングル盤は以前から持っていたのですが,最近になって同じレコードに別のジャケット(洋楽なら「ディフカバー」です)が存在することを知り,さっそく入手しました。
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レコード(赤盤)![]() |
スリーブ![]() |
最初から持っていたのはジャケットはBタイプ,レコードは写真の赤盤でした。それから同じBタイプの黒盤も入手,そして今回入手した別ジャケがAタイプで黒盤です。今回買ったほうをAタイプとしたのは,盤面のスタンパー番号を見るとこれが「TP-2742-A 1S-2」で初回プレスと見られるからです。面白いのはBタイプでは黒盤がスタンパー「1S-41」,赤盤が「1S-58」で赤盤が一番新しいプレスということです。
東芝のレコードは赤盤が貴重視され,赤盤が存在する場合それが初回プレスと思っている人が多いですが,実際にはそうでもありません。ビートルズでも初回黒盤で次回以降が赤盤というのがあるようですし,同じ時期に同じレコードの赤盤と黒盤が並行してプレスされていたのもほぼ確実です。それもそうだけど,そもそもなんで同じ曲の同ナンバーのシングル盤に2種類のジャケットがあるのでしょう,謎はますます深まります(06/10/27)。
東芝レコードは1956年に「東京芝浦電気レコード部」として発足,1960年に親会社の東芝から独立して「東芝音楽工業(株)」になります。ここでは東芝音楽工業(略して「東芝音工」「音工」と呼ばれることがあります)の邦楽レコードのいろいろなレーベルを,スリーブも含めて紹介します(06/11/07)。
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レーベル![]() |
スリーブ![]() |
私の持っている最も古い東芝シングルです。モノラルでレーベルは黒、鮮やかな黄色のスリーブに入っています。「東芝レコード」の文字がまぶしくカッコよいスリーブの裏面は「東芝レコード傑作盤」のカタログになっています。 |
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レーベル![]() |
スリーブ![]() |
上と同じ黒レーベルの植木等ものですが,変わったスリーブに入っています。これも間違いなく東芝のスリーブです。レーベルに渡辺プロのロゴが入っています。 |
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レーベル![]() |
スリーブ![]() |
1969年頃に私が生まれて初めて買ってもらったレコードはこの加山雄三の「夜空を仰いで/旅人よ」とドリフターズの「北海盆歌/ツンツン節」の2枚,どちらも東芝のシングルであったことに運命を感じます。残念ながらここに写っているのはあとになって買ったもので,その時のものではありません。ステレオの青レーベルですが後のものに比べてSTEREOの文字が大きく,矢印がありません。スリーブはビートルズのオデオン盤でおなじみの緑のものです。 |
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レーベル![]() |
歌詞カード![]() |
4曲入り「コンパクト盤」。4曲入り7インチは欧米にもありますが,欧米のが45回転EPであるのに対して,日本のコンパクト盤は33回転の「17センチLP」であることがまったく違います。なぜこういう違いが生じたのかはわかりませんが,東芝は本国で45回転で発売されていたビートルズの4曲入りも33回転で発売しています。袋型のジャケットにレコードと歌詞カードが封入されています。植木等のシングルはこれに収録された「だまって俺についてこい/無責任数え歌」からステレオになりますが,シングル盤は珍しく高価でなかなか手に入らない。 |
CR1616![]() |
レーベル![]() |
スリーブは下と同じ | 東芝音工は自社が配給する洋楽レーベルの一部を邦楽歌手にも使っていました。これはキャピトルで,モノラルの紫レーベルです。このワイルドワンズ「思い出の渚」は昔から不思議な音だと思っていたのですが,モノラルで聞くと納得します。 |
CR1662![]() |
レコード![]() |
スリーブ![]() |
同じくキャピトルでステレオになった紫レーベル,美しい赤盤です。 ですがレコード番号のプリフィックスがモノラルのCRになっており,マトリックスのほうはステレオを示す「ST」を追加した「ST-CR-1662-A 1S-1」となっています。どうも最初はモノラルで発売が予定されていたのが直前になってステレオに変更になったようです。昭和42年2月15日発売の初回プレスですから,この時期が東芝のシングルがモノからステレオに移行した境目であるようです。 |
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レーベル![]() |
スリーブは上と同じ | きちんとステレオのレコード番号になった紫レーベル。東芝のキャピトルで面白いのはレーベルの曲名の英字表記が上で大きく,カッコの中に邦文表記があることです。洋楽っぽさをだそうとしているのでしょうか。それにしてもキャピトルロゴの「U.S.A .RECORDING」はウソですよね(笑)。私はこの曲はアルバムバージョンのほうが好きですが,グループサウンズというものの物凄さがわかるのはこのシングルバージョンかもしれません。 |
CP1031![]() |
レーベル![]() |
スリーブ![]() |
1968年のキャピトル渦巻きレーベル。スリーブも青いものに変わります。黛ジュンがキャピトルであることにはちゃんと理由があって,この「夕月」もメロディーや歌詞は演歌調ですがサウンドはかなりヘビーな洋楽系エレキサウンドなのです。 |
LP1220![]() |
レーベル![]() |
スリーブ![]() |
今度はリバティ。スリーブは上と同じ青タイプですが,並んでいる配給レーベルの種類やデザインが変わっています。アップルレーベルが誇らしげに表示されているので1969年以降ですね。東芝レコードのスリーブは1970年にワーナーレーベルの配給がワーナーパイオニア(渡辺プロが作ったレコード会社)に移ると同時に上の岡崎友紀コーナーで紹介したデザインに変わります。 |
EP1132![]() |
レーベル![]() |
スリーブは上と同じ | 最後はおなじみ東芝エキスプレスレーベル。フォークブームの頃にフォーク・クルセダースや写真のシューベルツ,トワエモアなどでスタートし,その後荒井由実,チューリップなどでニューミュージックブームも牽引した名門レーベルです。 |
東芝音楽工業(株)は東芝のほとんど100%子会社だったようですが,1973年にその当時世界最強の音楽コングロマリットだったキャピトルEMIが55%資本参加することでEMI系列に入り,社名も東芝EMI(株)に変わります。EMIエレクトローラやパテマルコーニEMI,ボベマEMI(これはオランダ)の仲間になったわけです。音工からEMIへの移行期のレコードも興味深いので紹介します(06/11/08)。
スリーブの表示から言っても,音工時代には楕円に囲まれた「東芝ロゴ」が,東芝音楽工業という会社自体のブランドロゴであったことがわかります。これが邦楽だけに用いられる1レーベルのロゴに格下げになったのが,EMIが資本参加して東芝だけの子会社ではなくなった東芝EMI時代,ということができるでしょう。
レコードの売り上げ枚数だけからいえば,東芝レコードの黄金時代は東芝EMIになってからで,ユーミンのレコードが大量に売れたのもこの時代です。しかし今になってみれば東芝レコードのほんとうの黄金時代は,ビクターやコロムビアなど外資系とは違う新興独立レーベルとして,戦後大発展した日本の電器産業をバックにどんどん発展していった東芝音楽工業時代であったように思えます。
東芝の洋楽といえば,なにはさておきビートルズです。ビートルズのレコードについてはくわしいwebページがゴマンとあるので,ここでは私が個人的に興味を持ったものだけをこじんまりと紹介します。
最近,東芝盤「ラバーソウル」の初期盤を手に入れました。ビートルズのコレクションはお金持ちには絶対かなわないし,イギリスオリジナルのモノ盤があれば他はなくてもよいと思うのでこだわりはないのですが,一番好きなアルバムである「ラバーソウル」の国内初盤は何となく持っていたいなあ,と思っていました。東芝オデオンレーベルのラバーソウルは初盤(昭和41年3月15日発売)のOP7450と,昭和42年に再発されたOP8156の2種類がありますが,これはOP7450で盤面のマトリクスナンバーや内袋からみても初回プレスにかなり近いものです。ジャケットに「everclean record」と記されているだけにレコードは美しい赤盤です。
OP7450![]() |
裏ジャケ![]() |
内袋![]() |
レコード![]() |
対訳付き歌詞カード![]() |
洋楽の国内盤に歌詞カードがついているのはこれより前から常識でしたが,歌詞に対訳がついたのはこのラバーソウルがはじめてだと思います。(次作の「リボルバー」以降はまたついていなかったのも不思議です。ビートルズの国内盤全アルバムに対訳がつくのは1976年の全タイトル再発からです。)
音を聞いてみると後の国内盤に比べてかなり鮮度がよく,オリジナル盤とは勝負にならないにしろそれなりに聞ける音です。この音を最初に聞いていればイギリス盤をはじめて聞いた時にあれほどのショックは受けなかったかもしれません。
(この項は続く)