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最近聞いたアルバム

Randy Newman "Harps and Angels"

Nonesuch 122812 2

最近のネットや言論にあふれている「愛国者」の基本的な主張が,「日本はすばらしい,優れた国だ,世界から尊敬されている」とか「日本は正しかった,侵略などしていない,虐殺などしていない」というものであることに違和感を覚える。彼らが祖国を愛する理由が「日本は優れた国であり,正しい国である」からのように見えるからだ。いっぽう私は日本という国には(よい点がたくさんあるのと同程度に)たくさんの欠点や問題があるし,日本は歴史の流れの中で(正しいことをたくさんしたのと同程度に)間違ったこともたくさんしてきたと思う。しかし私は日本が大好きだし,日本を離れて他のどこの国にも行きたくはない。40を過ぎて初めていくつかの外国に行く経験をして,その気持ちはますます強いものになった。

「お国は父母のようなものだから敬え」といった比喩があるが,私もそのとおりだと思う。私の父は困った人間で非常にたくさんの欠点があるし,たくさんの人に苦労をかけて生きてきた。しかし彼は私の父であり,他の人が私の父であることなどあり得ない。母についてもそうだ。われわれが父母を父母と思い大切にするのは,彼らが優れた父母であったり正しい父母であったりするからではない。最高の父母でないから敬わないなんて人間がいれば間違いなく親不孝といわれるだろうし,自分の父母を崇拝するだけの人間なら大人としては扱われない。おなじように,欠点だらけの国であろうが最も軽蔑される国であろうが自分の祖国は日本しかないわけで,もし欠点のない最高の国でなければ日本を愛せないとか,愛するあまりに欠点を見ないというなら,むしろその人は「愛国者」ではないのではないか。

ランディー・ニューマンの新作が出た。今回もアメリカ社会のさまざまな問題に対する批判や冷笑にあふれた内容だ。しかしニューマンほどアメリカを愛している人がいないことも,いつものようにはっきりと伝わってくる。私もニューマンのようなやりかたで日本という祖国と同胞を愛したいと思う(08/11/08)。


"Superfly"

Warner Music Japan WPCL-10477

ひさしぶりに自分で買おうと思った「いまの音楽」で約2年ぶりの更新。ロックやポップスという音楽フォーマットが正常に機能しているのはもう世界で日本だけだとは前から思っていたけれど,こんなにカッコいいものを聞かされてしまうと本当に自分が老いぼれていることが寂しくなる。いま自分が二十歳だったらなあ,と思う。この人は愛媛の人で,最近まで地元で活動していたらしい。北海道十勝管内池田町というとんでもない田舎がドリカムの音楽(好きじゃないけど)を生み出しているように,日本の田舎っていうのはすごい(また四国の女の人というのは独特のすごさを持っているとも思う)。どの曲でもロックというフォーマットで可能な要素すべてが驚くべき咀嚼力で綜合化されているだけでなく,この人がロックだけでなく日本の歌謡曲などもきちんと聞き込んでいることも随所でわかる。タイトルやジャケットの色彩から連想されるのがHolliesの"Butterfly"であるのは俺だけか。ロック好きな人なら年齢を問わず必聴として推薦(08/07/02)。


PUFFY "Splurge"

KI/OON KSCL 1010

「ロック」が「ロック」であるために一番大切なことは,それが単なる音楽であることにとどまらずに,ロック的な人生観や生活訓を醸し出すことにあると思う。べつに歌詞の中に人生観や生活訓が散りばめられているということではなく音そのものがそうであるものがロックだと思う。ニールヤングが一貫してロックであるのはそういった意味でだ。その点でパフィーの音楽は常にロックである。このアルバムにも「生きる」ことについての明確な主張がある。

ずっと下の方に昔書いたように,ロック/ポップミュージックは既に日本のものが世界で一番質が高いと思う。ロックというフォーマット自体が本来ごった煮でありオタク的であり物真似もオリジナリティでありうるものであることが日本人にはプラスしているかもしれない。

しばらくCDも買わない間にパフィーちゃんたちはアメリカで大スターになってしまった。「本場で活躍」みたいな使い古された表現は使いたくないけど,日本のミュージシャンたちがロックというフォーマットの中でのオリジナリティを確実に主張できていることは確かだと思う。とくにそれが「俺たちロックだぜぇ!」みたいな連中でなくパフィーちゃんであることが重要だ。CDの中身について全然述べなかったが例によって「モグラ」みたいな曲も楽しませてくれるが「Radio Tokyo」「Security Blanket」などオーソドックスなポップ/ロックナンバーの出来が物凄く良い。とてもとてもカッコいい。(06/09/20)


Brian Wilson presents "SMiLE"

NONESUCH WPCR-11916 

ブログでも取り上げた「SMiLE」をしばらく聴き込んでみると,(もちろんこれは驚くべきことに,なのだが)このスマイルとオリジナルの断片との最大の違いは「音質」であることがわかる。ひとつはブライアンの声。しかしよくここまで復活したと感心させる彼の声や歌回しにはそれほどの違和感はない。楽器の音も同様で,よく現代にこれだけ60年代風の音に録ったなあと感心する(機材はぜんぶ真空管らしい)。じゃあなにが違うのか。それはこのCDが「ステレオ」であることだ。「Beach Boys Today」以降の彼のサウンドは,モノラルミックスによって深い奥行きを感じさせることを旨としていた。オリジナルのスマイルにしても,流出した断片にはステレオミックスもあるものの,本来のキャピトルからのリリースがモノラル(または疑似ステ)で予定されていたことは史料より明らかだ。それに気づいてモノラルで再生してみた。念を入れてフルレンジスピーカー1本で。しばし沈黙......................これは正真正銘のスマイルだったのだ。こんなことが可能なのだ。奇跡だ。(04/10/16)

My Pieces

原田知世 "My Pieces"

FOR LIFE FLCF3929 

知世ちゃんのニューアルバムは明らかにわれわれの世代をターゲットにしている。20年以上ポップスを聴いてきた人間ならどこかで聴いたことのあるような,懐かしさを感じさせる曲とサウンド。鈴木慶一によるマッカートニー・サウンド(空と糸),ジョージ・ハリスン追悼サウンド(Ready to leave)等に混じって,スティーヴィー・ニックスが歌いそうな曲(砂の旅人)や疑似サイケも並んで,前作とはまた別人化した女優・原田知世の独り舞台を楽しめる。しかし,若干舞台装置がゴテゴテし過ぎているような感もあり,この感じはきちんとしたオーディオで聴いた時よりiPodなどで聴いた時に強くなる。原田知世のアルバムを買ってバックのサウンドを中心に聴きたいという人はそれほどいないだろうから,もっと役者を前面に出すような音造りを望みたい。とはいえ水準以上,きちんと楽しめるアルバムではある。それにしても,前のアルバムから1年半近く経っているのにカタログ番号が61番しか進んでいない。レコード不況を実感させるなあ。(03/01/16)


Summer breeze

原田知世 "Summer breeze"

FOR LIFE FLCF3868 

知世ちゃんは女優なので,役柄にあわせてどんな人にでもなることができる.シンガーとして歌っている時も,それは変わらない.プロデュース次第で,まったく別の歌手になることができる.しばらく続いた「スエディッシュ・ポップ歌手」時代がやっと終わって,今度のアルバムではナチュラル系スタンダード歌手に変身.これは大正解だった.今回のプロデュースはゴンチチ.で,そういう音にそういう歌.知世ちゃん自身,完全にそうなっているのが凄い.さすが女優だよなあ.
このアルバムは全曲がカバー,ほとんどがしばらく前のポップヒット曲だ.そして,すべて実に良くできている.とくにビージーズの「How deep is your love」やブレッドの「If」などは原曲よりも気に入った(単に原曲があまり好きでなかった,というだけか.だってビージーズに,よりによってブレッドだぜ).最近,知世ちゃんが昔歌った「守ってあげたい」を聞く機会があったのだけど,このアルバムもあわせて,ああ,この人はもともと歌がうまかったのだなあ,と改めて感じた(01/08/28).

Crimson King

IN THE COURT OF THE CRIMSON KING, AN OBSERVATION BY KING CRIMSON

ISLAND ILPS9111 → CAROLINE CAR1502-2

どこが最近聴いたアルバムじゃあ,って言わないで.これはおなじみの「クリムゾンキングの宮殿」(実は意味不明なところが良い日本語訳)の最新24bitリミックス盤なのだ.もちろん私がこのレコードを初めて聴いたのはアナログ時代だけど,その後何度かCD化されていた.でもそれらのCDはどれも「眠たい音」で,アナログの「かなり歪みっぽいけどエネルギーのある音」とは似ても似つかない音でがっかりさせられたし,私はそれで今でもこれは主にアナログで聞く.ところが,ロバート・フリップ自身による(前のもそうだったけど)再リマスタリングが施されたこのCDはこれまでのCDとは次元の違う音.アナログのエネルギーがほぼそのまま再現された上に,それぞれの音がすごくピュアになり,歪みっぽさが消えている.とくにドラムス,ベースの音がすごく改善されて,まるで最近の録音のように聞こえる.アナログはあの「歪みっぽさ」がひとつの個性だったから好みはわかれるだろうが,長年愛聴している人にはぜひ一度聞いてみてほしい.私が買ったのはアメリカ盤だが,国内盤(ポニーキャニオンPCCY01421)も同じリマスターのはず.しかし,なんど聞いてもタイトル曲("B面"2曲目,CDでは5曲目)のメロトロンの音には鳥肌が立つね(00/02/28).


Bad Love

RANDY NEWMAN "BAD LOVE"

DREAMWORKS DRMD50115 

俺が聴くのはあくまでもポジティブな音楽だけだ.でも,本当にポジティブであるためにはある種の絶望の存在を知っている必要があるし,それを経験している必要があるのではないだろうか.単にポジティブなだけの音楽は童謡であるか,洗脳とか統制のための音楽だ(いまの「J-POP」の多くに感じられる救いようのない白々しさ....).ポジティブな音楽がわれわれを励ますのは,その裏側に絶望の重みが感じられるからに違いない.サーフィン時代のビーチボーイズにおけるブライアン・ウイルソンの絶望と,それを基盤にしたポジティブな音楽から感じられるもの,それは確かに音楽の本質だ.
ランディ・ニューマンは,これまでわりとどう聴いたらいいのかわからないミュージシャンのひとりだった.感動させられると言うよりは困惑させられ,和まされるよりはイライラさせられた.そこになにか,すごいものがあるのはわかるけど,どうもリラックスできないと言うか.ところが,本当に久しぶりのこのアルバムはちょっと違う.もちろん,彼独特の皮肉や風刺は昔のままだ.でも,なにかものすごい暖かさ,ポジティブさを感じる.まあそんなこと言ったらニューマンは「うまくだまされてやがる」と笑うのかもしれないけど.最近は大量にCDを買うので(買えるので?)1枚を繰り返し聞き込むことは少なくなったけど,これはかなり聴いている.これはいいよ(99/8/9).

FEVER FEVER

パフィー ”FEVER FEVER CD”

EPIC ESCB1995

パフィーちゃんは2人ともとても美しいのに「美人デュオ」とかの決まり文句で呼ばれないのはなぜだろう.2人の存在感とか,生き方がそういう分類を許さないのか.さて,今度のCDは前のに比べて全体を通した統一感がなぜかはっきりしていて,アルバムっていう感じで聞ける.曲も演奏もあいかわらずカッコイイ.そして,「ほんとう」に誠実な音楽.
個人的にはやっぱり奥田民生の曲,とくにシングルの「夢のために」が好き.ほんとにそうだなあ,って感心し,励まされる.クレージーキャッツの曲と似た力を持った曲だ.それはそうと,奥田民生の曲ってときどきすごくポール・マッカトーニーみたいになる.とくに間奏やコーダ(曲の終わり近く)でのコードの展開の仕方がウイングス全盛期のポールにそっくり.「さすらい」とかもそう思ったけど,「夢のために」でも間奏がすごくポール.奥田の中での「ビートルズっぽさ」ていうのはポールなんだなあ,と思った(2JUL99).

spitz

スピッツ "花鳥風月"

POLYDOR POCH1776

あ,新しいの出たんだ,と思って買ってみたら新曲はわずかでほとんどは昔出た曲の寄せ集め.むむ,なかなかアクドイ商売だぜと思って聞きはじめたが,結局聞かされてしまった.古い曲でも基本的なテイストがまったく同じで,古さを感じさせない.根底にあるテーマはすべて「性と死」(変換ミスではありません)だという点も同じだけど,古いものは最近のものほど露骨でない分聞きやすく,そしてやがてよけいに寂しい.こんな歌を作りながら正常な(?)社会生活を続けていくというのはいったいどういう気分だろう.下のアルバムと同じくここにもパフィーの曲,「愛のしるし」の自演が入っているけど,T-REXサウンドの見事な再現に感心.このバンドの音の起源がちょっとわかった(20MAY99).


okuda tamio

奥田民生 "月を超えろ"

SONY SRCL4507

またナメタ内容だろうと予想していても,またバカにされるのだと分かっていても,やっぱり買ってしまった.予想通りだった.そのうえ4曲しか入ってなくて,あろうことか1曲はパフィーの歌った「Mother」なのだ.なんたる手抜きだ.しかしまたも聞かされてしまった.「月を超えろ」と「メリハリ鳥」はお決まりのギターバンドサウンドでワクワク.「Mother」は良い曲なので当然ウルウル.でも個人的には「ワインの馬鹿」で研究室のビニールレザーのソファーから転げ落ちた.おれはなんだか吉田拓郎とか,かぐや姫とか,フォークを連想してしまった.あちこちに「フォーク」とか「ニューミュージック」とか「GS」とか,「日本の音楽」のイディオムがさりげなく(?)ちりばめられていて,それでいて新しい.こういうのがほんとの日本のロックだと思う...違うか? しかし,このジャケット写真....(13MAY99)

Dylan Live1966

Bob Dylan "LIVE 1966"

SONY SRCS8758/9 

ディランは1965年にそれまでの「フォークミュージック」に電気楽器を取り入れようとしてフォークファンから総スカンを食った.変わったのは音だけじゃなく,それまでの政治的「プロテストソング」をやめ,内省的で個人的,より本質的な歌詞が歌われるようになった.その意味で,この時代のディランはビートルズと並んで,単なるダンスミュージックだった「ロックンロール」を「ロック」というより知的で広範な音楽へ変化させた張本人だといえる.このアルバムはそうした伝説的時期のディランのイギリスでのライブを収めたもの.前半アコースティック,後半エレクトリックというニールヤングみたい(笑)な構成のコンサートだが,後半では保守的フォークファンからの野次,非難,示威行為など不穏な雰囲気の中,破壊的で未来的な演奏が展開される.バンドの音が「今風」なのに感心した.いま,若い人でロックを真剣に聴いている人なら,この演奏は必ず受け入れられるはずだ.歌っていることが同じだから.しかし個人的には,前半アコースティックセットでのディランの繊細で深みのある歌に感動した.本当に深い悲しみはむしろ人を励ますのかも知れない.あと,豪華なブックレットと解説も読みでがあるし,情報量も多い.なにしろ写真に写されたディランのカッコいいことと言ったら...(24NOV98)

Imagination(J) Imagination(US)

Brian Wilson "Imagination"

Giant(BMG Japan) BVCG706

56歳になって,2回結婚して,子どもが計4人もいるおじさんが「Oh My Gosh, Happy Days are here again」とか「Your Imagination running wild」とか極限に「アオい」歌を歌ってるのは,ふつうに考えればかなり気持ち悪い.でも,ブライアンなら許されるのだ.こういうものには批評はなし.ただただ涙,また涙あるのみ.ロックじゃない? まあこの音はロックじゃない.でも,生きててくれるだけで励ましになる,っていうミュージシャンの存在ということ自体,ロックそのものだよ.高校3年までの俺にとってのJohn Lennonのように.このアルバム,どうも国内盤とアメリカ盤ではジャケットが違うようだ.写真左が国内盤,右がアメリカ盤.収録曲が国内盤の方が多いし,萩原健太他の解説も読みでがあるのでここは国内盤がお勧め(30JUN98).


スピッツ "フェイクファー"

POLYDOR POCH1685

こういう時代に人生に対してポジティブであり続けることはとてもヘビーなことだと思う.そういう辛さがヒリヒリと伝わってきて,聞いてるとどんどんせつなくなる.BGMには向かない.美しい日本語とシンプルなメロディ.30年前に「日本語はロックに向かない」といってた人たちはこういうものをどう聴くのだろう(聴かないか...).曲の説得力のかなりの部分が,歌えるわりにタイトで重心が低いリズムセクションとけっこうマニアックなプレイの優秀なギタリストというバンドの演奏力に支えられている点にも注目.個人的には「運命の人」が良かった.「変な下着に夢がはじけてたたき合って笑うよ」っていうとこ,本当に「人生の意味がわかって」しまっている.あと,ジャケットの女の子がとてもかわいい(21Apr98).


パフィー "JET CD"

EPIC/SONY ESCB1871

いまポップスが世界で一番カッコいいのは日本だ.間違いない.「ロック」ってことなら,アメリカにも,イギリスにも,少なくなったとはいえ聞くべきものはある(ニールヤングとかね..).でも,「ポップス」がいまだに何かを訴え続けているのは日本だけだ.究極に不真面目な,それでいて究極に高級なサウンドの上で,パフィーの二人は透徹した視線でたぶん200年か300年先をぼんやりと見つめている.ある種のやさしさや,きちんとした絶望は,もはやこういうフォーマットでしか表現できない.そういう時代だ.テレビから流れてくるこれらの曲に衝撃を受けない「音楽ファン」にはなんらかの感受性が欠如しているのではないか(18Apr98).


奥田民生 "股旅"

SONY SRCL4204

ロックの偉大なアルバムには「こんなのロックじゃねえよ」って曲が必ず1曲は入っている.ヤードバーズ「リトルゲームズ」B面とか,「ホワイトアルバム」とかね.しかし,これはそれが何曲も入っている.ものすごく偉大なアルバムか,全体としてロックじゃないか,のどっちかだ.で,どう見ても全体としてこのアルバムはロックそのものだ.ということはすごく偉大なアルバムか.といってもタイトル曲が「さあジョン,行くぞジョン」ってのはどう聴いたらいいのかなあ....



BOB DYLAN "TIME OUT OF MIND"

SONY SRCS8456

ボブ・ディランの新譜はここのところ必ず買って聴いてるんだけど,この数年ではこれが一番いい.フォークギター弾き語りが続いていたけど,これはちゃんとバンドの音になっているし,その音が往年のサウンドを彷彿とさせる.曲も,歌詞もいい(ただし,各曲はかなり長い..).この世にはまだちゃんとしたものが残っていると安心させる.テイスト的にはアルバム通じてベタなサウンドという点で息子のやってるバンドと近いんだけど,あっちは通して聞くのがかなりつらかったのに対し,これはきちんと最後まで聞かせる.まだまだ大丈夫だぞー,負けないぞー.


PETE HAM "7 PARK AVENUE"

RYKODISC VACK1122

ピート・ハムは69年にビートルズのアップルレーベルからデビューして数曲のヒット曲を残した「バッドフィンガー」のリーダー,ボーカリスト,ギタリストだったが,75年に首を吊って死んだ.このアルバムは彼がメンバーと一緒に住んでいた家のプライベートスタジオで作っていたデモテープを集めたもので,去年出た.買った,聞いた,泣いた."No Matter What"など既発曲のデモバージョンも泣かせるが,未発表曲がどれもすごくいい.ほとんどが一人多重録音のシンプルな音で,曲のメロディが裸になっている.ピート・ハムの作るメロディって,ほんとにきれいだったんだなあ.でも,まわりの人間の汚さや自分の孤独をそのまま歌っちゃった"No More"など,最晩年の曲はちょっと聴くのがつらい.


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